幻もち麦 生産者 牧 秀宣さん(愛媛県東温市)
第32回 日本農業賞大賞受賞
第42回 農林水産祭農産部門 内閣総理大臣賞受賞
幻もち麦生産者:牧 秀宣さん
愛媛県東温市(旧:温泉郡重信町北野田地区)で農場を営む牧秀宣さんは、地域の風土に適合した穀物栽培に取り組み、赤米・黒米・コキビ・アワ・裸麦・もち麦(ダイシモチ)・シコクビエ・地トウキビ・緑米・小麦を栽培しています。食の安全・安心・健康志向に徹して、雑穀栽培では農薬・肥料をほとんど使わず、米麦作は減農薬栽培に努めています。麦については、除草剤も使わない畝立て栽培を開発し、無肥料栽培を基本としています。
もち麦を作り始めた経緯は、愛媛県農産課(県庁)の人からのもち麦を提供されたのがきっかけでした。当時すでにうるち性の裸麦は作っていましたが、うるちだけでは面白くないとはっきり違いがわかる黒い色のもち麦に注目しました。もち麦は長い栽培の歴史がありながら、作る人がいなくなっていたので、「これを復活させたい」ともち麦栽培に取り組み始めました。実際はじめてみると、もともともち麦は丈が高いので、成長すると全部倒れてしまいました。
そこで、農林水産省四国農業試験場(香川県善通寺市)の協力を得て、黒の色素を残し、丈の短い品種を選別し本格的にもち麦栽培に取り組みました。2005年から本格的に「ダイシモチ」の生産を開始。しかし、栽培に取り組み始めたもののだれも栽培方法や活用方法を知らないことに大変苦労されました。もち麦の素晴らしさを知った牧さんは、もち麦の栽培を続け、すべてが手探り状態で、自分の舌で確かめ、自分の足で市場を少しづつ開拓しもち麦を地道な努力で何年もかけて復活させてきました。栽培していく過程で、大麦は表皮をすべて削ってしまわないと食べられないが、裸麦やもち麦は表皮を薄く削るだけで、食用にできることが分かった。この表皮部分に、現在の日本人に不足しているミネラルが多く含まれることも分かった。特に、鉄やマグネシウム、亜鉛などは大麦のほぼ倍の含有量であり、また、糖質が少なく食物繊維を含むという性質も持っていることも分かりました。
この表皮部分を残す精製技術は、もち麦生産者の牧秀宣さんに優る人はいません。(匠の技)
幻もち麦(ダイシモチ)は、はだか麦のため表皮が軟らかく約6~7分搗きすることで大切な「アントシアニン色素」を残すことが出来ます。これに対し、外国産(アメリカ産)もち麦は、皮麦なので表皮が硬く精製を強くしなければならないので、肝心の栄養素を残すことが出来ないのです。よって、外国産は白いもち麦となっています。
昔からの言い伝えに、『自然が恵んだ、土地に合うものを作れ』という言葉がある。(牧秀宣氏)
≡ はだか麦は世界で最も少ない麦です ≡
牧 秀宣 農業生産法人 ㈲ジェイ・ウィングファーム 代表
1952年生まれ。1971年海外派遣農業研修生として2年間アメリカの農業を学ぶ。
1993年㈲ジェイ・ウィングファーム設立。
第32回 日本農業賞大賞受賞(平成14年)
第42回 農林水産祭 内閣総理大臣賞受賞(平成15年)
愛媛県農業法人協会 会長